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2021/09/02

住み替え時のダブルローンって大丈夫?審査・デメリット・解消法を解説

住み替え時のダブルローンについて宅建士が解説する記事のアイキャッチ画像

住み替えを考えたとき、多くの方が最初にぶつかるのが「今の家が売れる前に、新しい家を買っても大丈夫なのか」という問題です。住宅ローンがまだ残っているのに、新居のローンをもう1本組む。この状態が「ダブルローン」です。

結論から申し上げます。ダブルローンは、条件を満たせば利用でき、住み替えの自由度を大きく高める手段です。一方で、二重返済が続く期間の負担は決して小さくありません。都心のマンションを想定した試算では、ローン2本で月35万円超、旧居の管理費や税金を含めると月43万円前後が毎月出ていきます。ただし買い先行では、新居のローンを一定期間利払いのみに抑える「返済据置」を使われる方がほとんどで、その場合は月27万円前後まで下がります。そして首都圏の中古マンションが売れるまでの期間は、成約したものだけを平均しても82.5日(公益財団法人 東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2025年)」)。決済・引渡しまで含め、本記事では旧居の売り出しから決済までの目安として4〜5ヶ月を置いています。

つまりダブルローンの成否は、「組めるかどうか」だけでなく、「重複期間中の資金繰りを維持しながら、売却の時期と価格を合理的に判断できるか」で決まります。

この記事では、ダブルローンの発生条件と審査の実際、二重負担の具体的な金額、解消までにかかる期間、そして負担を軽くする実務的な方法までを整理します。いずれも公的データと具体的な試算に基づいています。

【この記事でわかること】

  • ダブルローンが発生する具体的なケースと、住み替えローン・つなぎ融資との違い
  • 銀行が審査で見ている項目と、同じ銀行で2本組めるのかという疑問への答え
  • 都心の実勢価格に基づく、二重負担の実額シミュレーション
  • ダブルローンが続く期間の現実的な見積もり方
  • 意外と知られていない「税制特例を使うと住宅ローン控除が受けられなくなる」落とし穴
  • ダブルローンを解消・回避する5つの方法と、それぞれが向いている人

【気になるところからお読みください】

まず「今の家がいくらで売れるか」を把握することから

ダブルローンを組むべきかどうかは、今のお住まいがいくらで、どのくらいの期間で売れそうかがわからなければ判断できません。査定は売却を決めていなくてもお申し込みいただけます。

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ダブルローンとは?住み替えで住宅ローンが二重になる仕組み

ダブルローンとは、住宅ローンを2本同時に契約し、並行して返済している状態のことです。住み替えの場面では、いま住んでいる家の住宅ローンが残ったまま、新居を購入するための住宅ローンをもう1本組むことで発生します。「二重ローン」と呼ばれることもありますが、指している内容は同じです。

住宅ローンは原則として契約者本人が居住する住宅を対象とした融資であり、既存のローンを残したまま新たに借りられるかどうかは金融機関・商品によって異なります。それでもダブルローンが認められるのは、住み替えの場合、旧居の売却によって1本目のローンが近い将来なくなることが前提になっているためです。住み替えにおけるダブルローンは、旧居を売却するまでの一時的な状態として利用されるのが一般的です。

ダブルローンとは、住宅ローンを2本同時に返済している状態

もう少し具体的に整理します。ダブルローンが成立している間は、次の2つを同時に負担することになります。

  1. 旧居の住宅ローン(残債の返済。売却して完済するまで続く)
  2. 新居の住宅ローン(新たに組んだ借入。35年など長期にわたる)

このうち1は、旧居を売却し、売却代金や自己資金などでローンを完済した時点で消えます。そこまでの期間が「ダブルローン期間」です。この期間中の資金繰りを維持しながら、売却の時期と価格をどう判断するかが、住み替え全体の資金計画を左右します。

POINT

ダブルローンは「借金が2倍になる」わけではありません。旧居の残債は、売却代金や自己資金などで返済される前提の一時的なものです。問題は残高そのものよりも、売れるまでの間、毎月のキャッシュフローが二重に出ていくという点にあります。

住み替えでダブルローンが発生する3つのケース

住み替えでダブルローンが発生するのは、主に次の3つの場面です。

1. 買い先行で住み替えるケース

新居を先に購入し、その後で旧居を売却する進め方です。ダブルローンが発生する最も典型的なパターンで、意図的にこの状態を選ぶことになります。実務では、この場合に新居のローンを一定期間利払いのみに抑える「返済据置」を利用される方がほとんどです(詳しくは解消・回避する5つの方法の②)。

2. 建て替えるケース

いま建っている家を取り壊して建て替える場合、旧建物の住宅ローンが残っていれば、新築のための借入と重なることがあります。住み替えとは少し性格が異なりますが、二重返済が発生する点は同じです。

3. 売り先行のつもりが、売れずにダブルローンになるケース

「先に売ってから買う」つもりでいたものの、購入したい物件が先に見つかってしまった、あるいは売却活動が長引いて先に新居の決済日が来てしまった、というケースです。意図せずダブルローンに入ってしまうパターンであり、資金計画上は最も注意が必要です。

ダブルローン・住み替えローン・つなぎ融資の違い

住み替えの資金調達には、ダブルローンのほかにも選択肢があります。混同されやすいので、違いを整理しておきます。

項目 ダブルローン 住み替えローン つなぎ融資
仕組み 住宅ローンを2本並行して組む 旧居の残債と新居の購入資金をまとめて1本で借りる 売却代金が入るまでの資金を一時的に借りる
主な用途 旧居の売却を待たずに新居を買いたい 売却してもローンを完済できない(オーバーローン) 売却と購入の決済日がずれる
返済期間 旧居売却まで二重(その後は1本) 通常の住宅ローンと同様に長期 数ヶ月程度の短期
金利水準 通常の住宅ローン金利 通常の住宅ローンよりやや高め 住宅ローンより高め
タイミングの自由度 高い(売却時期を選べる) 低い(売却と購入の同時決済が原則) 中程度
審査の厳しさ 厳しい(既存借入を含む返済能力を見られる) 厳しい(担保割れの借入になる) 中程度

ダブルローンが選びやすいのは、売却代金で旧居のローンを完済できる見込みがある方(アンダーローンの状態)です。売却してもローンが残ってしまう場合は、住み替えローンや自己資金による完済などを検討することになります。なお、つなぎ融資は売却代金が入るタイミングのずれを埋めるための商品であり、残債が売却代金を上回る状態そのものを解消する手段ではありません。決済日のずれだけが問題なのであれば、商品によっては選択肢になります。

※上表は一般的な傾向です。金利・条件は金融機関や商品によって異なります。

こうした資金調達手段そのものの選び方については、自己資金なしでも住み替えはできる?で、アンダーローン・オーバーローンそれぞれのケースに分けて詳しく解説しています。


住み替えでダブルローンになるのはどんなとき?

ダブルローンになるかどうかは、「売却と購入のどちらを先に進めるか」でほぼ決まります。ここでは発生パターンを場面ごとに整理し、最後にご自身が該当するかどうかを判定できる3つの質問をご用意しました。

買い先行を選んだとき

買い先行とは、新居の購入を先に済ませ、引越してから旧居を売り出す進め方です。この場合、新居の決済時点で旧居のローンが残っているため、ほぼ確実にダブルローンになります。

買い先行が選ばれるのは、次のような事情があるときです。

  • どうしても手に入れたい物件が見つかり、売却を待っていると他の買主に決まってしまう
  • 子どもの学区や転勤の都合で、引越し時期を動かせない
  • 仮住まいを挟みたくない(引越しを2回したくない)

売り先行と買い先行のどちらを選ぶべきかという判断そのものについては、住み替えでは、売却と購入のどっちが先?で、それぞれに向いている方の条件を整理しています。

建て替え・建替中に発生するケース

いま住んでいる家を建て替える場合も、二重返済が生じることがあります。旧建物の住宅ローンが残っている状態で、新築工事のための借入を実行するためです。

建て替えの場合、住み替えと違って「旧居を売って完済する」という出口がありません。そのため、次のいずれかで対応することになります。

  • 旧ローンを自己資金で完済してから新規借入を実行する
  • 旧ローンを新規借入にまとめる(借換えを伴う形)
  • 建て替え期間中の仮住まい費用も含めて資金計画を組む

注意

建て替えのケースは、住み替えと資金の流れが根本的に異なります。売却による返済原資がないため、金融機関の審査では返済能力だけで2本分を賄えるかが見られます。建て替えを検討されている場合は、早い段階で金融機関に相談することをおすすめします。

売り先行のつもりが売れず、結果的にダブルローンになるケース

実務でも見られるのが、このパターンです。「売れてから買おう」と考えていたにもかかわらず、次のような流れで意図せずダブルローンに入ってしまいます。

  1. 旧居を売り出す
  2. 売却活動中に、条件の良い物件が見つかってしまう
  3. その物件を押さえるために購入を先に決める
  4. 旧居がまだ売れていない状態で新居の決済日が来る

この場合、ダブルローンを前提とした資金計画が組まれていないため、想定外の負担になりやすいのが問題です。売り出してから成約までにどれくらいかかるかを事前に把握しておくことが、この事態を防ぐうえで有効です。

【3つの質問】あなたはダブルローンになる可能性があるか

次の3つにお答えください。

  1. いま住んでいる家に、住宅ローンの残債がありますか?(いいえ → ダブルローンにはなりません)
  2. 新居の購入に住宅ローンを利用しますか?(賃貸に移る、または現金で購入する → ダブルローンにはなりません)
  3. 旧居の売却代金の受領(決済)より前に、新居の決済が来る可能性がありますか?(はい → ダブルローンになります)

3つすべてに「はい」が当てはまる場合、ダブルローンを前提とした資金計画が必要です。特に3つ目は、売却活動の進み具合によって後から変わりうる項目なので、売り先行を予定している方も一度は検討しておく価値があります。


ダブルローンの審査 — 銀行は何を見ているのか

ダブルローンの審査は、通常の住宅ローンより慎重に見られます。金融機関から見れば、旧居のローンが残ったまま新たな借入を負担できるかどうかを確認しなければならないためです。ここでは、審査で実際に見られている項目と、通過の可能性を高めるための準備を整理します。

住宅ローンの審査書類を確認する相談の場面

審査で見られる5つの項目

金融機関がダブルローンの審査で重視するのは、主に次の5点です。

1. 年収と返済負担率

年収に占める年間返済額の割合です。最も重要な項目で、既存の借入も年間返済額に含めて計算するのが原則です。ただし後述するとおり、旧居を売却する予定であることが確認できる場合には、旧居のローンを計算から除ける取扱いもあります。合算されるかどうかは金融機関・商品によって異なります。

2. 旧居の担保価値と売却見込み

旧居がいくらで売れそうか、その代金で残債を完済できるかを見られます。売却見込み額が残債を下回る場合、ダブルローンの承認は難しくなります。

3. 完済時の年齢

多くの金融機関で、完済時年齢の上限を80歳前後に設定しています。新居のローンを長期で組む場合、この上限に触れないかが確認されます。

4. 返済履歴・信用情報

これまでの住宅ローンや各種ローンの返済に延滞がないかが照会されます。ダブルローンでは既存ローンの実績がそのまま評価対象になるため、通常の新規借入より重く見られます。

5. 住宅ローン以外の借入

自動車ローン、教育ローン、カードローン、キャッシングなども返済負担率の計算に含まれます。ダブルローンでは返済負担率に余裕がないため、これらが承認の可否を分けることがあります。

返済負担率の目安

返済負担率とは、年収に占める年間合計返済額の割合です。公的な目安として、住宅金融支援機構【フラット35】では次の基準が公表されています。

年収 総返済負担率の基準
400万円未満 30%以下
400万円以上 35%以下
出典:住宅金融支援機構【フラット35】ご利用条件

民間金融機関の基準はこれと異なる場合がありますが、考え方の目安として広く参照されています。

ここで、ダブルローンを検討する方に関わる重要な取扱いがあります。【フラット35】には、旧居のローンを返済負担率の計算から除ける仕組みが用意されています。

重要な注意点

住宅金融支援機構は、返済中の住宅ローンの対象となっている現在居住している住宅を売却予定で、その売却予定額により当該住宅ローンを完済できることが確認できる場合に限り、総返済負担率の算定においてその返済額を年間合計返済額から除くことができるとしています(2020年4月1日以後の借入申込み受付分から)。

さらに、売却予定額が残高に満たない場合であっても、差額を手持金や新規借入金で賄えることが資料等により確認できるときは、同様に除くことができるとされています。

確認書類の例として、残高証明書・返済予定表(残債務額)、売買契約書・媒介契約書・買取保証書(売却予定額)、預金通帳・金融機関が融資を約する書類(手持金・借入金等)が挙げられています。

出典:住宅金融支援機構【フラット35】「総返済負担率の算定方法の見直しについて」

つまり「ダブルローンだから必ず2本分を合算して35%以内に収める必要がある」とは限りません。民間金融機関では取扱いが異なるため、実際の判断は借入先ごとの確認が必要です。

注意

一方で、【フラット35】の総返済負担率には、賃貸予定または賃貸中の住宅に係る借入金の返済額は含める取扱いとされています。「旧居を賃貸に出せば返済負担率の計算から外れるのでは」という考え方は通用しません。除外できるのはあくまで売却予定であることが確認できる場合です。

年収別・返済負担率からみた月々の返済余力の目安

次の表は、旧居のローンが除外されず単純に合算されると仮定した場合の参考例です。返済負担率35%を前提に、年間で返済に充てられる上限額を年収別に整理しています。

年収 返済負担率35%の年間返済上限 月あたり 旧居ローンが月13万円の場合の新居分の余地
800万円 280万円 約23.3万円 約10.3万円
1,000万円 350万円 約29.2万円 約16.2万円
1,200万円 420万円 約35.0万円 約22.0万円
1,500万円 525万円 約43.8万円 約30.8万円
2,000万円 700万円 約58.3万円 約45.3万円
※返済負担率35%で機械的に算出した目安です(当社試算)。借入可能額そのものではなく、返済に充てられる月額の余地を示しています。元本・審査金利・借入期間は考慮していません。実際の審査基準は金融機関ごとに異なり、前述のとおり旧居のローンが計算から除かれる場合もあります。

この表からわかるのは、旧居のローンが合算される前提に立つと、新居に回せる余地がかなり圧縮されるということです。裏を返せば、旧居を売却する前提を書面で示せるかどうかが、審査の通しやすさを大きく左右します。後述するシミュレーションでは、新居8,000万円の借入を想定しています。この返済額(月約22.4万円)を旧居のローンと並行して負担するには、相応の年収水準が必要です。

同じ銀行で住宅ローンを2本組めるのか

「いま借りている銀行で、そのまま2本目を組めないか」というご質問をよくいただきます。

結論としては、同じ金融機関で2本組めるかどうかは金融機関の方針次第です。取り扱っている金融機関もあれば、1世帯1本を原則として認めていない金融機関もあります。

それぞれの特徴を整理します。

同じ金融機関で2本目 別の金融機関で2本目
手続き 既存取引の情報があるため比較的スムーズ 一から審査。書類の準備が増える
審査 旧居のローン状況を正確に把握されている 旧居のローンは信用情報で把握される
交渉余地 取引実績を踏まえた相談がしやすい 条件面で他行と比較検討しやすい
注意点 そもそも2本目を扱っていない場合がある 既存借入があることで審査が厳しくなる

いずれの場合も、旧居のローンを借りている金融機関への事前相談は必要です。売却によって完済する計画である以上、金融機関にとっても関係のある話になるためです。

ダブルローンを扱う金融機関の傾向

ダブルローンはすべての金融機関が取り扱っているわけではありません。検討の初期段階で、次を確認しておくことをおすすめします。

  • そもそもダブルローン(住宅ローンの2本目)を取り扱っているか
  • 旧居の売却を前提とした審査に対応しているか
  • 旧居売却後の繰上返済に手数料がかかるか、条件はどうか
  • 新居のローンについて、一定期間の元金据置に対応しているか

金融機関ごとに商品性が大きく異なる領域なので、複数の金融機関に当たって比較することが有効です。

審査に通りやすくするための4つの準備

ダブルローンの審査に臨む前に、次の4点を整えておくと通過の可能性が高まります。

  1. 旧居の査定を取り、売却見込み額を数字で示せるようにする — 「いくらで売れるか」を客観的な資料で示せると、金融機関の判断材料になります
  2. 住宅ローン以外の借入を整理する — 自動車ローンやカードローンを繰上返済しておくと、返済負担率に余裕が生まれます
  3. 使っていないクレジットカードのキャッシング枠を解約する — 金融機関によっては、未使用でも与信枠として見られる場合があります
  4. 自己資金の額を明確にする — ダブルローン期間中の返済を自己資金で賄える見込みを示せることは、当社の実務上、審査で評価されやすい材料です

プロのアドバイス

特に重要なのが1点目です。売却見込み額の根拠が曖昧なままでは、金融機関も「本当に売れるのか」を判断できません。前述の【フラット35】の取扱いでも、売却予定額を確認する書類として売買契約書・媒介契約書・買取保証書が挙げられています。近隣の取引事例に基づいた査定書は、金融機関への事前相談で売却見込み額を説明する材料になります。ただし、正式な審査や既存ローンを算定から除外するために必要な書類は、金融機関・商品によって異なります。査定は売却を決める前でも取得できます。


二重負担は月いくら?都心の実額でシミュレーション

ここからが、この記事の中心です。ダブルローンの負担は「大変そう」という感覚ではなく、具体的な金額で把握することが欠かせません。都心のマンションを想定した実際の数字で見ていきます。

前提:対応8区の中古マンションは中央値8,800万円

まず、シミュレーションの前提となる価格水準を確認します。国土交通省「不動産情報ライブラリ」の取引価格データをもとに、渋谷区・港区・目黒区・千代田区・中央区・品川区・世田谷区・杉並区の中古マンション(1LDK以上・居住用)の取引価格を集計しました。

取引件数 中央値 平均
港区 1,361件 1億4,000万円 1億8,722万円
千代田区 301件 1億2,000万円 1億6,619万円
中央区 1,340件 1億2,000万円 1億2,530万円
渋谷区 778件 1億1,000万円 1億4,452万円
目黒区 634件 8,150万円 9,403万円
品川区 1,275件 7,900万円 9,009万円
世田谷区 1,757件 6,800万円 7,465万円
杉並区 812件 5,700万円 6,110万円
8区計 8,258件 8,800万円 1億1,388万円
出典:国土交通省「不動産情報ライブラリ」取引価格データをグローバルトラスト不動産が集計。2024年第4四半期〜2025年第3四半期の取引、中古マンション等・1LDK以上・居住用に限定。 ※直近の四半期は公表後にデータが追加され件数・金額が動くことがあるため、集計の安定性を考慮して2025年第3四半期までの4四半期分を対象としています。

当社が対応する8区の中古マンションは、中央値で8,800万円という水準です。以下のシミュレーションは、この実勢に沿って新居1億円(借入8,000万円)を前提に置きます。

【シミュレーション】新居8,000万円+旧居残債3,000万円のケース

次の条件でモデルケースを設定します。

項目 条件
新居の購入価格 1億円(頭金2,000万円・借入8,000万円)
新居のローン 変動金利0.945%・35年・元利均等返済
旧居のローン残債 3,000万円(金利0.6%・残り20年)

この条件での毎月の返済額は次のとおりです。

月額返済
新居のローン(8,000万円・0.945%・35年) 223,784円
旧居のローン(3,000万円・0.6%・残20年) 132,681円
ダブルローン期間中の合計 356,465円
※元利均等返済方式による当社試算。新居の金利は2026年8月時点で公表されている主要行の変動金利水準(三菱UFJ銀行の新規借入金利 年0.945%など)を参考にした前提値です。

返済据置を使わず、元金と利息を最初から返していく場合、旧居が売れるまでの間、毎月35万円超が返済に出ていくことになります。旧居のローンが完済されれば約22.4万円に戻りますが、それまでの期間はこの水準が続きます。

見落としやすい「ローン以外の二重コスト」

ダブルローンの負担を考えるとき、返済額だけを見ていると足元をすくわれます。旧居を保有し続けている限り、ローン以外の費用も二重に発生するためです。

マンションの場合、次の費用がかかり続けます。

費用 月額の目安
管理費・修繕積立金 45,000円
固定資産税・都市計画税(月割) 30,000円
小計 75,000円
※本シミュレーションでは、都心の比較的高額なマンションを想定し、管理費・修繕積立金を月4.5万円、固定資産税・都市計画税を月3万円と仮定したモデル条件です。統計上の平均値ではなく、物件により大きく異なります。ご自身のケースでは、管理費・修繕積立金は毎月の引落額、固都税は納税通知書の年額を12で割った金額に置き換えてお読みください。

これを先ほどの返済額と合算すると、ダブルローン期間中に毎月出ていく金額は次のようになります。

月額
新居・旧居のローン合計 356,465円
旧居の保有コスト(管理費・修繕積立金・固都税) 75,000円
重複期間中の月間支出(据置を使わない場合) 約431,465円
※旧居の保有コストのみを加えた金額です。新居側の管理費・修繕積立金・固定資産税は、旧居が売れた後も続く費用のため含めていません。

注意

このほかに、旧居を売却する際には仲介手数料・印紙税・抵当権抹消登記費用などがかかります。また、新居購入時にも登記費用や不動産取得税が発生します。ダブルローン期間中の資金計画では、毎月の返済に加えて、これらの一時金を払える現金余力があるかまで確認しておく必要があります。

実務では「返済据置」で負担を抑えるのが一般的

ここまでは、新居のローンを最初から元金と利息の両方で返していく前提で計算しました。しかし買い先行で住み替える場合、実際には「返済据置(元金据置)」を使われる方がほとんどです。

新居の決済後、おおむね半年から1年の間に旧居を売却することを条件に、その期間は元金の返済を据え置き、利息のみを支払う取扱いです。旧居の売却決済が済んだあと、元金を含めた返済に切り替わります。

元金+利息で返す場合 据置(利払いのみ)を使う場合
新居のローン(8,000万円) 223,784円 63,000円
旧居のローン(残債3,000万円) 132,681円 132,681円
旧居の保有コスト 75,000円 75,000円
重複期間中の月間支出 約431,465円 約270,681円

据置を使えば、月あたり約16.1万円軽くなります。詳しい仕組みと注意点は解消・回避する5つの方法の②で解説します。

重要な注意点

ただし据置期間には期限があります。期限内に旧居が売れなければ元金の返済が始まり、支出は約43.1万円に戻ります。据置期間そのものが売却の期限になるとお考えください。

期間別の累計支出

期間によって累計がいくらになるかを整理します。据置を使う場合と使わない場合の両方を示します。

ダブルローン期間 元金+利息で返す場合 据置(利払いのみ)を使う場合
3ヶ月 約129万円 約81万円
6ヶ月 約259万円 約162万円
12ヶ月 約518万円 約325万円
※いずれも旧居の保有コストを含む金額です。据置の場合は、据置期間内に売却が完了した前提で計算しています。

3ヶ月と12ヶ月では、据置を使っても支出が約244万円変わります。ダブルローンの資金計画で「期間」を先に見積もっておく必要があるのは、この差が大きいためです。

重複期間中の累計支出を示したグラフ。元金+利息で返す場合は3ヶ月129万円・6ヶ月259万円・12ヶ月518万円、据置(利払いのみ)を使う場合は3ヶ月81万円・6ヶ月162万円・12ヶ月325万円

混同しやすい3つの数字を分けて考える

ここが、ダブルローンの資金計画で最も間違えやすいところです。「毎月出ていく金額」と「売却が遅れることで増える金額」と「値下げと比べるときの金額」は、すべて別物です。

# 何の数字か 金額 どんなときに使うか
重複期間中の月間支出 据置あり 約27.1万円
据置なし 約43.1万円
「毎月これだけ払えるか」という資金繰りの判断
売却が1ヶ月延びることで増える支出 約20.8万円 期間が延びたときに、いくら余計に出ていくか
値下げと比べるときの経済的コスト 3ヶ月 約27万円
6ヶ月 約54万円
「値下げするか、待つか」の損得比較

②が①より小さいのはなぜか。旧居が今日売れたとしても、新居のローンはその後もずっと払い続けるからです。旧居が売れないことで余計に出ていくのは、旧居のローン13.3万円と旧居の保有コスト7.5万円を合わせた約20.8万円です。新居のローンは、売却の早い遅いにかかわらず発生します。

なお②と③は、新居で据置を使っても金額が変わりません。どちらも旧居側の費用だけで構成されているためです。据置によって軽くなるのは①だけとお考えください。

③がさらに小さいのはなぜか。旧居のローン返済額13.3万円のうち、大部分は元金の返済だからです。この条件(残債3,000万円・年0.6%・残20年)では、6ヶ月間に支払う約79.6万円のうち、利息は約8.9万円で、残りの約70.7万円は元金の返済にあたります。元金の返済分はローン残高が減っているだけなので、売却時の手取りが増える形で戻ってきます。消えてなくなるお金ではありません。

保有期間 旧居ローンの利息 旧居の保有コスト 経済的コストの合計
3ヶ月 約4.5万円 22.5万円 約27.0万円
6ヶ月 約8.9万円 45.0万円 約53.9万円
12ヶ月 約17.6万円 90.0万円 約107.6万円
※上記のほかに、価格が下落するリスク、資金が拘束されることの機会費用、想定外の修繕費なども実際には発生します。

重要な注意点

「売り急いで値下げするか、待つか」を比べるときに、①の月間支出(据置あり約27.1万円/据置なし約43.1万円)を使ってはいけません。据置の有無にかかわらず、新居のローンは待っても待たなくても払う費用であり、元金の返済分は資産として残ります。

比較に使うのは③です。たとえば「3ヶ月待てば200万円の値下げを避けられる」という見通しがあるなら、待つ側のコストは約27万円ですから、待つ方が有利という計算になります。①で比べると「129万円かかるから値下げした方がよい」という逆の結論が出てしまいます。

ただし、③はあくまで金額の比較です。売却は買主のある話なので、待てば必ずその価格で売れるという保証はありません。資金繰り(①)に無理があるなら、損得計算にかかわらず早期の成約を優先すべき場面もあります。

二重負担の期間を決めるのは、売却の進み方です

月々の負担額は資金計画で見通せますが、それが何ヶ月続くかは売却活動の進み方次第です。まずはご所有の物件が、いくらで、どのくらいの期間で売れそうかを把握してください。

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ダブルローンはいつまで続く?期間の現実的な見積もり

ダブルローン期間とは、新居の決済日から、旧居の売却代金を受け取る日までの期間です。その長さは、新居を決済する時点で旧居の売却がどこまで進んでいるかによって変わります。ここでは実際のデータをもとに、旧居の売却にどのくらいかかるのかを検討します。

首都圏の中古マンションは登録から成約まで平均82.5日

公益財団法人 東日本不動産流通機構(東日本レインズ)が公表している「首都圏不動産流通市場の動向(2025年)」によれば、首都圏の中古マンションが登録から成約に至るまでの日数は平均82.5日でした。前年の85.3日から3.3%短縮しています。

登録から成約に至る日数(中古マンション・首都圏)
2023年 80.1日
2024年 85.3日
2025年 82.5日
出典:公益財団法人 東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2025年)」(2026年1月20日公表)

82.5日は約2.7ヶ月です。この数字だけを見ると「3ヶ月弱で売れるのか」と感じられるかもしれません。しかし、旧居の売り出し開始から決済・引渡しまでの期間は、これより長くなります。理由は次の2つです。

首都圏の中古マンションが登録から成約に至る日数の推移。2023年80.1日、2024年85.3日、2025年82.5日

「成約まで」と「決済・引渡しまで」は違う

82.5日という数字は、レインズに物件情報を登録してから、売買契約が成立するまでの日数です。ダブルローンが解消されるのは契約成立時点ではなく、代金を受け取る決済・引渡しの日です。

一般的な中古マンションの売買では、契約から決済まで1〜2ヶ月程度かかります。買主が住宅ローンを利用する場合、当社では契約から引渡しまで約2ヶ月をご案内しています。買主の住宅ローン審査(本審査)に時間を要するためです。

つまり実際の流れは次のようになります。

  1. 売り出し(レインズ登録)
  2. 約82.5日後 — 売買契約の成立
  3. さらに1〜2ヶ月 — 決済・引渡し、売却代金の受領、旧ローンの完済

レインズが公表しているのは登録から成約までの82.5日であり、売買契約から決済・引渡しまでにも一定の期間を要します。そのため本記事では、旧居の売り出し開始から決済までの資金計画上の目安として4〜5ヶ月を想定します(決済・引渡しまでの1〜2ヶ月は当社の実務上の目安であり、公表された統計値ではありません。買主が住宅ローンを利用する場合、当社では約2ヶ月をご案内しています)。これは旧居の売却全体にかかる期間であり、ダブルローン期間そのものとは一致しません。新居を決済する前に旧居を売り出していれば、二重返済が発生する期間はこれより短くなります。仮に新居の決済と旧居の売り出しが同時期で、重複期間そのものが4〜5ヶ月になった場合、先ほどのモデルでの累計支出は4ヶ月で約173万円、5ヶ月で約216万円です。

POINT

売り出しの準備期間(媒介契約の締結、室内の整理、写真撮影、価格設定の検討など)は、この82.5日に含まれていません。買い先行で新居の決済日が決まっているのであれば、新居の決済を待たずに旧居の売却準備を始めることが、期間短縮に直接つながります。

売れ残りは平均日数に出てこない

もう1つ、注意しておくべき点があります。82.5日という数字は、成約したものだけを集計した平均値だということです。売れずに市場に残り続けている物件は、この平均に含まれていません。

同じレポートによれば、2025年の首都圏中古マンションの数値は次のとおりです。

項目 2025年
新規登録件数 185,762件
成約件数 49,114件
成約㎡単価 82.98万円(13年連続上昇)
成約価格 5,200万円(13年連続上昇)
出典:公益財団法人 東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2025年)」

ここで注意していただきたいのは、新規登録件数と成約件数は、それぞれ1年間に発生した件数を別々に集計したものだという点です。前年以前に登録された物件が当年に成約する場合もあるため、成約件数を新規登録件数で割った値を「成約率」として扱うことはできません。同じ物件群を追いかけた数字ではないからです。

82.5日という平均日数は、成約に至った物件だけを集計したものです。市場に残り続けている未成約物件の売却期間を示すものではありません。

つまり「平均82.5日」は、売れた物件の中での平均にすぎません。価格設定や売り方を誤れば、平均日数を大きく超えて売れ残る可能性は十分にあります。ダブルローンの資金計画は、平均値ではなく余裕を持った期間で組むべきです。

期間を左右する3つの要因

売却期間は運任せではありません。次の3つが期間を大きく左右します。

1. 価格設定

価格設定は、売却期間に大きく影響する要因の一つです。相場より高い価格設定では、売却が長期化しやすくなります。ダブルローン中は「高く売りたい」と「早く売りたい」が正面から衝突するため、どこまで待てるかを先に決めておくことが重要です。売却が3ヶ月延びると、追加で出ていく金額は約62万円、利息と保有コストで見た経済的なコストは約27万円です(前述の②と③)。値下げ幅と比較する際は、この経済的コストを基準にしてください。

2. 築年数と管理状態

築年数は動かせませんが、管理状態の見せ方は工夫できます。管理組合の運営状況、修繕履歴、大規模修繕の実施予定などを整理して提示できると、買主の不安が減り、判断が早まります。

3. 売り方(情報の出し方)

売却情報がどれだけ広く買主に届いているかで、成約までの期間は変わります。該当するのは、レインズへの登録状況、他社からの問い合わせへの対応、広告の展開範囲といった要素。この点は後ほど詳しく取り上げます。


住み替えでダブルローンを使うメリット

ここまで負担の話が続きましたが、ダブルローンにはそれを引き受けるだけの明確なメリットがあります。整理しておきます。

売却期限に追われにくく、値下げを急がずに済む

ダブルローンのメリットは、売り先行や同時決済に比べて、売却時期の選択肢を持ちやすいことです。

売り先行の場合、新居の購入や仮住まいの都合から「この日までに売らなければならない」という期限が生まれがちです。期限が迫ると、価格を下げて成約を急ぐ判断が必要になる場合があります。

ダブルローンであれば、資金余力と据置期間の範囲内で、売却時期を調整しやすくなります。仮に値下げを抑えられた額が、待つことで生じる経済的コストを上回るのであれば、経済合理性のある選択になります。ただし売却の成否は買主のある話であり、待てば必ず希望価格で売れるというものではありません。

POINT

ここは冷静に比較すべきところです。「焦って売れば200万円下がるが、待てば希望価格で売れそうだ」という状況を考えます。6ヶ月待つ場合の経済的なコストは約54万円(旧居ローンの利息+旧居の保有コスト)ですから、見通しどおりに売れるのであれば、待つ方が有利という計算になります。

ただし、この比較には毎月の支出(①)を6ヶ月払い続けられるかという資金繰りの裏づけが要ります(モデルケースでは据置ありで約27.1万円、据置なしで約43.1万円)。また、待てば必ずその価格で売れるという保証もありません。待つことで得られる金額と、待つことでかかる費用の両方を数字で置くのが正しい判断の仕方です。

仮住まい・二重の引越し費用が不要

売り先行では、旧居を引き渡してから新居に入るまでの間、仮住まいが必要になることがあります。仮住まいには次の費用がかかります。

  • 賃貸物件の敷金・礼金・仲介手数料
  • 数ヶ月分の家賃
  • 引越し費用(旧居から仮住まい、仮住まいから新居の2回分)
  • 荷物が入りきらない場合のトランクルーム代

これらを合算すると、まとまった金額になります。ダブルローンであれば旧居から新居へ直接移れるため、仮住まいにかかる費用や手間を抑えられます。重複期間中の支出の一部は、この節約分で相殺できる計算です。

空室の状態で売り出せる

見落とされがちですが、実務上これは大きなメリットです。

先に新居へ引越してしまえば、旧居は空室の状態で売り出すことになります。空室での売却には次の利点があります。

  • 内覧の日程調整が容易になる(居住中は土日に限られがち)
  • 生活感がなく、部屋が広く見える
  • 買主が家具の配置などをイメージしやすい
  • 売主が立ち会わなくてよいため、買主がじっくり見られる

内覧の機会を確保しやすくなり、売却を進めやすくなる場合があります。ダブルローン期間を短くする方向に働く要素として評価できます。

空室の状態で売り出すマンションの明るいリビングダイニング

ダブルローンのデメリットと5つの注意点

メリットの裏側にあるリスクを整理します。特に最後の2つは、他ではあまり触れられていない一方で、金額的な影響が非常に大きい項目です。

毎月の返済負担が重くなる

すでに詳しく見たとおり、都心のモデルケースでは月35万円超(旧居の保有コストを含めると約43.1万円)が毎月出ていきます。据置を使えば約27.1万円に抑えられますが、それでも小さい金額ではありません。

問題は金額そのものより、この状態がいつまで続くか読みにくいことです。売却は相手のある話であり、自分の努力だけでは期日をコントロールできません。想定より売却が長期化しても対応できる資金余力を見ておくことをおすすめします。

審査が厳しく、希望額に届かないことがある

金融機関・商品によっては旧居のローンも含めて返済負担率を審査するため、新居に回せる借入余地が圧縮される場合があります。一方、旧居の売却予定や完済見込みを書類で確認できれば、旧居のローンを算定から除外できる商品もあります(前述の【フラット35】の取扱いなど)。どちらになるかで借りられる額が変わるため、早い段階で確認しておくことが大切です。

その結果、「買いたい物件が見つかったのに、ダブルローンでは希望額まで借りられない」という事態が起こり得ます。物件を探し始める前に、ダブルローン前提でいくらまで借りられるのかを金融機関に確認しておくことが、無駄な物件探しを避けるうえで有効です。

旧居を賃貸に出すことは原則できない

「売れるまでの間、旧居を賃貸に出して家賃でローンを払えばよいのでは」と考える方は少なくありません。しかしこれは原則としてできません。

住宅ローンは「契約者本人が居住する住宅」を対象とした融資であり、賃貸に出すことは資金使途違反にあたります。無断で賃貸に出した場合、一括返済を求められる可能性があります。

賃貸に出したい事情がある場合は、必ず事前に金融機関へ相談し、承諾を得るか、賃貸用のローンへの借換えを検討してください。

注意

前述のとおり、住宅金融支援機構【フラット35】の総返済負担率の計算には、賃貸予定または賃貸中の住宅に係る借入金の返済額も含まれると公表されています。賃貸に出したとしても、審査上の負担が消えるわけではありません。

住宅ローン控除を受けられるのは原則1軒のみ

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、主として居住の用に供すると認められる住宅が対象です。ダブルローンで2本の住宅ローンを組んでいても、控除の対象になるのは実際に住んでいる新居の1本だけです。

旧居のローンは、たとえ返済を続けていても控除の対象外となります。「2本組めば控除も2倍」ということはありません。

【重要】3,000万円特別控除・買換え特例を使うと住宅ローン控除が使えない

ここが、ダブルローンを伴う住み替えで最も見落とされやすく、金額的な影響が大きい論点です。

旧居を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、税負担を軽くする特例がいくつか用意されています。代表的なのが「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」と「特定の居住用財産の買換えの特例」です。

しかし国税庁「マイホームを持ったとき」(パンフレット「暮らしの税情報」令和8年度版)は、留意事項として次のように明記しています。

入居した年又はその年の前2年若しくは後3年以内に譲渡所得の課税の特例(3,000万円の特別控除、買換え・交換の特例など)を適用するときは、住宅借入金等特別控除を受けられません。

つまり、新居に入居した年と、その前2年・その後3年を合わせた計6年間のうちいずれかで、旧居の売却で3,000万円特別控除や買換え特例を使っていると、新居の住宅ローン控除は受けられません。この制限は一般に「6年ルール」と呼ばれます。上記ページは令和8年中に居住の用に供した場合を対象としており、2026年に入居する方にそのまま当てはまります。

注意

「居住年およびその前後2年の計5年間」という記述を目にすることがありますが、これは令和2年3月31日以前の譲渡に適用される旧いルールです。現在の売却を検討されている方に当てはまるのは、計6年間のほうです。年数の数え方を混同しないようご注意ください。

これは住み替えで極めて起こりやすい組み合わせです。新居を買い、旧居を売り、売却益に3,000万円特別控除を適用する。この流れは自然ですが、そのまま進めると新居の住宅ローン控除を失うことになります。

どちらが有利かは、売却益の大きさと借入額によって変わります。売却益が大きければ3,000万円特別控除の効果が上回り、売却益が小さく借入額が大きければ住宅ローン控除の方が有利になることもあります。住み替えの計画段階で、必ず両方を試算して比較してください。

それぞれの制度の詳細は、以下の記事で解説しています。

重要な注意点

この比較は、住み替えの「順番を決める段階」で行うべきものです。申告後の変更が難しい場合があるため、適用する特例を決める前に比較してください。売却と購入のスケジュールを組む前に、税理士や税務署に相談して有利判定を済ませておくことをおすすめします。

金利上昇局面であることに注意

もう1つ、現時点で押さえておくべき論点があります。金利環境の変化です。

日本銀行は2026年6月16日の金融政策決定会合で、無担保コールレート(オーバーナイト物)の誘導目標を0.75%程度から1.0%程度へ引き上げることを決定しました(新方針の適用は6月17日から)。その後、7月31日の会合でも1.0%程度で推移するよう促す方針を維持しています。

住宅ローンの変動金利は、この政策金利の動きを受けて各金融機関が決める短期プライムレート等に連動します。政策金利が上昇した局面では、変動金利も引き上げられる可能性があります。ただし、実際に引き上げるかどうか、いつ・どの程度かは金融機関ごとの判断です。既存の借入について適用時期や返済額への反映時期がどうなるかも、金融機関や契約内容によって異なります。

金利水準そのものが0.25%変わると、返済額はどれだけ変わるのか。新規に借り入れる場合の比較が次の表です。

【参考】新規借入時の適用金利が0.945%から1.195%になった場合の返済額比較

金利 月額返済(8,000万円・35年)
0.945% 223,784円
1.195%(0.25%上昇後) 233,172円
差額 +9,388円/月(年間+112,656円)

重要な注意点

この表は、新規に借り入れる場合の適用金利の違いを比較したものです。すでに変動金利型で借りている方の毎月返済額が、金利上昇と同時にこのとおり増えるとは限りません。

変動金利型住宅ローンには、適用金利が上昇しても一定期間は毎月返済額を据え置き、返済額に占める利息の割合が増える形で調整する商品(いわゆる「5年ルール」)があります。この場合、返済額そのものが上がるのは次の見直しのタイミングです。

金利の見直し時期・毎月返済額への反映方法は金融機関および商品によって異なります。ご自身の契約がどの扱いになっているかは、借入先にご確認ください。

旧居・新居の双方が変動金利の場合は、2本とも金利上昇の影響を受けます。ダブルローン期間が長引くほど、この影響を受ける期間も延びることになります。

新規借入時の適用金利が0.945%から1.195%になった場合の毎月返済額の比較。223,784円から233,172円へ

注意

金利は金融機関や審査条件、適用される優遇幅によって差があります。上記は2026年8月時点で公表されている主要行の水準をもとに置いた前提値による試算です。実際の適用金利は必ずご自身で金融機関にご確認ください。


マンションが売れない…ダブルローンが長引いたときの対処法

ダブルローンで最も避けたいのが、旧居が売れずに期間が延びていく状況です。ここでは、売れないときに何を確認し、どう動くべきかを整理します。

まず確認する3つのこと

売れない状態が続いているとき、まず確認したい主なポイントは次の3つです。順番に見ていきます。

1. 価格が市場とずれていないか

売り出しから1〜2ヶ月経っても内覧の申し込みがほとんどないのであれば、価格設定が一因となっている可能性があります。ただし、広告の露出、写真の見せ方、売り出しの時期など他の要因が重なっていることもあるため、価格だけに原因を求めず、あわせて確認してください。

2. 内覧は入るが決まらないのか

内覧はあるのに成約しない場合は、価格に加えて、物件の見せ方や条件面も確認します。室内の状態、内覧時の対応、引渡し時期の条件などを見直す余地があります。

3. そもそも情報が買主に届いているか

見落とされやすいのがこの点です。レインズに正しく登録されているか、他社からの問い合わせに仲介会社が適切に対応しているか、広告がどこまで展開されているか。売却情報が市場に十分行き渡っていなければ、価格が適正でも売れません。

「囲い込み」で売れていない可能性

3つ目に関連して、注意しておくべき慣行があります。「囲い込み」です。

囲い込みとは、売却を依頼された不動産会社が、他社からの問い合わせを正当な理由なく断り、自社で買主を見つけようとする行為です。自社で売主と買主の両方から手数料を得るために行われます。

囲い込みが行われると、買主候補が自社の顧客に限定されるため、売却が長期化するおそれがあります。ダブルローンを抱えている売主にとって、これは1ヶ月延びるごとに約20.8万円の支出が積み上がることを意味します。

仕組みや見破り方については、不動産の囲い込みとは?損する仕組み・見破り方・2025年規制を宅建士が徹底解説で詳しく解説しています。ダブルローン中の方こそ、確認しておく価値がある内容です。

価格改定のタイミングと下げ幅の考え方

価格の見直しが必要と判断した場合、タイミングと幅の考え方があります。

タイミング:売り出しから1ヶ月経って内覧がゼロ、あるいは2ヶ月経って内覧はあるが申し込みがない。当社では、この段階を価格見直しを検討する一つの目安としています。ダブルローン中は、これをやや前倒しで考えてください。判断を先送りするほど、支出が積み上がっていきます。

下げ幅:小刻みな値下げを繰り返すと、「まだ下がるのでは」と買主に様子見をされる場合があります。下げるのであれば、検索の価格帯の区切り(例えば9,000万円台から8,000万円台へ)をまたぐ見直しが有効なこともあります。いずれも当社の実務上の考え方です。

POINT

ダブルローン中の価格判断では、値下げ幅と、待つことでかかるコストを並べて比べてください。比較に使うのは前述の③(経済的コスト)です。3ヶ月粘る場合のコストは約27万円ですから、それによって200万円の値下げを避けられる見込みがあるなら、粘る判断にも合理性があります。

一方で、粘っても価格が動かなければコストだけが積み上がります。また、毎月の支出(①)を続けられるかは別の問題です。据置を使っている場合は、据置期間を超えると支出が跳ね上がる点にも注意が必要です。「いつまで待つか」を先に決めておくことが、判断の先送りを防ぎます。

買取・買取保証という選択肢

どうしても期間を確定させたい場合、不動産会社による買取という選択肢があります。

仲介による売却 不動産会社による買取
売却価格 市場価格 市場価格より低くなる
期間 不確定(平均82.5日+決済期間) 短期間で確定できる
内覧対応 必要 原則不要
向いている場面 価格を優先したい 期日を確定させたい

買取価格は市場価格を下回るのが一般的です。ただし、買取価格と仲介で見込まれる売却価格との差に対して、売却を待つことで生じる経済的コスト(旧居ローンの利息・保有コスト)や価格下落のリスクが大きくなりそうな場合には、検討する価値があります。

売却活動中の都心の中古マンションの外観

「一定期間内に売れなければ買い取る」という買取保証を用意している場合もあります。ダブルローン期間の上限を確定させたい方は、こうした仕組みが使えるか相談してみるとよいでしょう。


ダブルローンを解消・回避する5つの方法

ここまでの内容を踏まえ、ダブルローンへの対処法を5つに整理します。すでにダブルローンに入っている方は「解消」、これから住み替えを計画する方は「回避」の観点でお読みください。

①旧居を売却して一括返済する(王道)

最も基本的で、本来想定されている解消方法です。旧居の売却代金で残債を一括返済し、ダブルローン状態を終わらせます。

  • 向いている人:売却代金で残債を完済できる見込みがある方(アンダーローン)
  • 注意点:繰上返済の手数料や条件を事前に確認しておく。売却期間の見積もりに余裕を持つ

この方法を選ぶ場合、成否を分けるのは売却をいかに早く、かつ納得できる価格で決められるかです。売却活動そのものの質が、そのまま資金負担に跳ね返ります。

②返済据置(元金据置)を使う — 買い先行では最も多い選択

買い先行で住み替える場合、実務ではこの方法を選ばれる方がほとんどです。新居の住宅ローンについて一定期間、元金の返済を据え置き、利息のみを支払う取扱いです。

進め方は次のとおりです。

  1. 新居の決済後、おおむね半年から1年の間に旧居を売却することを条件に、その期間は利払いのみとする
  2. 旧居の売却決済が完了した後、新居のローンが元金を含めた返済に切り替わる

利息のみの支払額は、借入残高 × 年利 ÷ 12 で計算します。元金が減らないため、据置期間中は毎月同じ金額です。

新居の借入額 元利均等での毎月返済(35年) 利払いのみの毎月支払
8,000万円 223,784円 63,000円 160,784円
1億円 279,730円 78,750円 200,980円
※年利0.945%(2026年8月時点の主要行の変動金利水準を参考にした前提値)で試算。元利均等返済方式・35年。

本記事のモデルケース(新居8,000万円の借入)で据置を使うと、重複期間中の月間支出は約43.1万円から約27.1万円になります。

重要な注意点

据置は負担を軽くする手段であって、なくす手段ではありません。据置期間には期限があります。

モデルケースでは、据置中の支出は月約27.1万円ですが、期限内に旧居が売れなければ元金の返済が始まり、月16.1万円増えて約43.1万円に戻ります。「半年で売る前提」で据置を組んだ場合、7か月目から負担が跳ね上がることになります。

つまり据置を使う場合は、据置期間そのものが売却の期限になります。この期限から逆算して売り出し価格と価格改定のタイミングを決めておくことが、そのまま資金計画の安全性につながります。

  • 向いている人:買い先行で住み替える方全般。特にダブルローン期間が数か月〜1年程度で終わる見込みがあり、その間のキャッシュフローを抑えたい方
  • 注意点:据置期間中も利息は発生する。元金が減らないため、総返済額は増える。利払いのみを選べる金融機関がありますが、取扱いの有無・据置できる期間・条件は商品によって異なります

具体的にどの期間まで据え置けるか、どのような条件が付くかは、借入を検討されている金融機関にご確認ください。当社でも、ご相談の段階で取扱いのある金融機関をご案内しております。

③住み替えローンに切り替える

売却してもローンが残ってしまう(オーバーローンの)場合、一般にダブルローンの審査は難しくなります。ただし前述のとおり、残債と売却予定額の差額を手持金などで賄えることが資料で確認できれば、旧居のローンを返済負担率の計算から除ける取扱いもあります(【フラット35】の場合)。売却後に残る債務を自己資金で処理できないときの選択肢が住み替えローンです。旧居の残債と新居の購入資金をまとめて1本で借ります。

  • 向いている人:売却代金で残債を完済できない方
  • 注意点:売却と購入の決済を同日に行うのが原則のため、スケジュールがタイトになる。担保価値を超える借入となるため審査は厳しい

④つなぎ融資を使う

売却代金が入るまでの期間を、短期の融資でつなぐ方法です。

  • 向いている人:売却は決まっているが、決済日が新居の決済日より後になる方
  • 注意点:住宅ローンより金利が高い。期間が延びると負担が増える

住み替えローンとつなぎ融資については、自己資金なしでも住み替えはできる?で、それぞれの利用条件と資金の流れを詳しく解説しています。

⑤そもそも売り先行にする

ダブルローンを確実に回避するには、旧居の決済・引渡しを済ませて既存の住宅ローンを完済してから、新居のローンを実行することです。売買契約を結んだだけでは旧居のローンは残るため、旧居の決済より先に新居の融資が実行されれば、その間は二重返済になります。

  • 向いている人:住み替え先の条件に柔軟性がある方、資金計画の確実性を優先したい方
  • 注意点:仮住まいが必要になる場合がある。良い物件を逃す可能性がある

売り先行と買い先行の選び方については、住み替えでは、売却と購入のどっちが先?で、それぞれに適した方の条件を整理しています。

【比較表】5つの方法

方法 内容 メリット デメリット 向いている人
①売却して一括返済 旧居を売り残債を完済 本来の解消方法。新たな借入が不要 売却期間が読めない アンダーローンの方
②返済据置 一定期間、元金返済を猶予し利払いのみにする 期間中のキャッシュフローが軽くなる(モデルで月16.1万円減) 利息は発生。総返済額は増える。据置期間に期限がある 買い先行で住み替える方(実務では最も多い選択)
③住み替えローン 残債と購入資金を1本化 オーバーローンでも住み替えを検討できる 同時決済が原則。審査が厳しい 完済できない方
④つなぎ融資 売却代金までを短期で借入 決済日のずれを吸収できる 金利が高い 売却が決まっている方
⑤売り先行にする 旧居の決済・ローン完済を先に済ませる 新居融資前に完済すればダブルローンを回避できる 仮住まいが必要な場合がある 確実性を優先する方
どの方法が向くかは、売却見込み額で決まります

5つのうちどれを選ぶべきかは、ご所有の物件が「いくらで売れるか」と「残債はいくらか」の関係で決まります。まずは売却見込み額を確認したうえで、選択肢を絞り込んでください。ご相談は売却をお決めでない段階でも承っています。

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受付時間:10:00〜19:00/火・水を除く

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ダブルローンの負担を軽くする実務的な3つの打ち手

ダブルローンの負担は「耐えるもの」と思われがちですが、実際には工夫の余地があります。ここでは実務的に効果の大きい3つを取り上げます。

売却コストを削る — 1億円で売却した場合、仲介手数料の差は最大336.6万円

見落とされやすいのが、売却にかかる費用そのものを減らすという視点です。売却時の主要な費用の一つが仲介手数料です。

仲介手数料の法定上限は、宅地建物取引業法に基づく国土交通省告示により、(売却価格 × 3% + 6万円)× 1.1(売却価格400万円超の場合)と定められています。なお売買代金800万円以下の「低廉な空家等」については、媒介に要する費用を勘案して、この計算式で算出した金額を超えて税込33万円まで受け取れる特例が設けられています(令和6年6月21日国土交通省告示第949号・令和6年7月1日施行)。本記事のモデルケースは1億円のため、通常の計算式によります。1億円で売却した場合の金額を比較します。

プラン 仲介手数料(税込) 法定上限との差額
法定上限(多くの不動産会社が請求する水準) 3,366,000円
ゼロチュー売却・他社経由で成約した場合(売却価格の1.5%+消費税) 1,650,000円 1,716,000円の削減
ゼロチュー売却・自社成約の場合 0円 3,366,000円の削減

グローバルトラスト不動産の「ゼロチュー売却」では、当社が買主を見つけて成約した場合(自社成約)、売主様の仲介手数料は0円です。他社経由での成約の場合も、売却価格の1.5%+消費税と、相場の半額の水準です。

ここで、この記事の主題と結びつけて考えてみてください。前述のとおり、値下げ幅と比較する際に見る経済的コストは、6ヶ月で約54万円でした。売却期間そのものは買主のある話で思いどおりにはなりませんが、仲介手数料の料金体系は、会社選びの段階で確認・比較できる要素です。

1億円で売却した場合、仲介手数料として支払う金額には最大336.6万円の差が生じます。売却期間の長短では動かせない規模の金額です。

ただし、これがそのまま最終的な手取りの差になるとは限りません。仲介手数料は譲渡所得を計算する際の「譲渡費用」にあたるため(国税庁 No.3202)、手数料が減れば譲渡費用も減り、課税される譲渡所得が生じるケースでは税額が増えます。仲介手数料の減額を反映した後も、3,000万円特別控除などにより課税譲渡所得がゼロとなる場合は、譲渡所得の税額に影響しません。税引後の手取り額は、譲渡所得や適用する特例によって変わります(詳しくはマンション売却の税金と税額計算をご覧ください)。

注意

ここでの336.6万円は、手数料として支払わずに済む金額です。ダブルローンの月間支出(①)で割って「何ヶ月分」と読み替えると、手数料を抑えれば二重負担が相殺されるかのような誤解を招きます。両者は別々の費用なので、それぞれ独立した金額として比較してください。

サービスの詳細は仲介手数料無料の売却サービスでご確認いただけます。

注意

仲介手数料が0円になるのは当社が買主を見つけた「自社成約」の場合です。他社経由で成約した場合は、売却価格の1.5%+消費税を申し受けます。実際の金額は売却価格によって異なります。

売り出し価格を「売れる価格」から逆算する

ダブルローン中の価格設定は、通常の売却とは考え方を変える必要があります。

通常であれば「まず高めに出して、反応を見て下げる」という進め方も選択肢になります。しかしダブルローン中は、様子を見ている期間そのものにコストが発生しているため、この進め方は不利に働きやすくなります。

おすすめするのは、次の順番で考える方法です。

  1. 二重負担を何ヶ月まで許容できるかを、資金余力から先に決める
  2. その期間内に成約する確度が高い価格帯を、近隣の取引事例から把握する
  3. その価格帯を基準に、上振れを狙える範囲で売り出し価格を設定する
  4. 事前に決めた期限で反応がなければ、決めておいた幅で改定する

重要なのは、価格改定の基準を売り出し前に決めておくことです。売り出した後は「もう少し待てば」という判断に傾きやすく、結果として期間が延びます。

売却活動の透明性を確保する

売却期間を左右する要因のうち、売主が確認できるのが「情報がきちんと市場に出ているか」です。次の点を仲介会社に確認してください。

  • レインズへの登録が完了しているか(登録証明書の交付を受ける)
  • 他社からの問い合わせが何件あり、どう対応しているか
  • 広告をどの媒体にどの範囲で出しているか
  • 内覧の申し込みと実施の状況

媒介契約の種類によって、仲介会社には売主への業務報告義務があります。定期的な報告を求め、内容を確認することが、囲い込みを含む不透明な状況を避けることにつながります。

ダブルローン中は、売却が1ヶ月延びるごとに約20.8万円の支出が増えます。遠慮せず確認してください。


あなたのケースで考える4つの判断シナリオ

ここまでの内容を、実際の場面に当てはめて整理します。ご自身に近いケースを参考にしてください。

シナリオA:買いたい物件が既に見つかっていて、旧居も好条件

方向性:ダブルローンを前提に進める価値があります。

購入したい物件が具体的に決まっており、旧居が都心の主要エリアで築年数や管理状態も良好であれば、売却期間は平均並みかそれより短く収まる可能性があります。

進め方としては、審査でダブルローンの可否と借入可能額を先に確認し、新居の契約と並行して旧居の売却準備を始めることです。新居の決済を待ってから売り出すと、その分だけダブルローン期間が延びます。

シナリオB:建て替えを予定している

方向性:資金の流れが住み替えと異なるため、早期に金融機関へ相談を。

建て替えの場合、旧居を売却して返済するという出口がありません。旧ローンの扱い(自己資金での完済、新規借入への一本化など)を金融機関と詰める必要があります。

また、建て替え期間中の仮住まい費用も資金計画に含めてください。工期が延びれば、その分だけ二重の負担期間も延びます。工期に余裕を見た資金計画を組んでおくことをおすすめします。

シナリオC:既に売り出しているが売れていない

方向性:原因の切り分けを急ぎ、値下げ幅と、待つことで生じる経済的コストを数字で比較してください。

まず「内覧が入っていないのか、内覧はあるが決まらないのか」を切り分けます。内覧が入っていない場合は価格設定が一因となっている可能性があり、内覧があるのに決まらない場合は見せ方や条件面もあわせて確認します。

あわせて、売却情報が市場に十分出ているかを仲介会社に確認してください。専任媒介・専属専任媒介の場合はレインズへの登録が宅地建物取引業法上の義務とされ、登録を証する書面が交付されます。登録状況と他社からの問い合わせ対応は、必ず確認すべき項目です。

判断が長引くほど支出は積み上がります。値下げ幅と、待つことでかかる経済的コスト(3ヶ月で約27万円)を並べて、早めに判断してください。

シナリオD:まだ検討段階で、できればダブルローンを避けたい

方向性:売り先行を軸に、まず売却見込み額と期間を把握することから。

購入物件がまだ決まっておらず、住み替え時期にも柔軟性があるのであれば、売り先行の方が資金計画は確実です。

ただし、売り先行を選ぶ場合でも「思ったより早く買いたい物件が見つかる」ことは十分あり得ます。ダブルローンになった場合にどの程度の負担になるかを把握しておくことで、その場面で慌てずに判断できます。

POINT

4つのシナリオは「こうすべき」と断定するものではなく、判断の方向性を整理したものです。実際の判断は、ご自身の資金余力・住み替え先の状況・金融機関の対応方針を踏まえて決めることになります。複数の要素が絡むケース(建て替え+売却が長期化しそう、など)では、優先順位を整理することで判断の質が上がります。


よくある質問(FAQ)

ダブルローンは誰でも組めますか?

いいえ、条件を満たした方に限られます。返済負担率に無理がないこと、旧居の売却代金や自己資金等で既存ローンを完済できる見込みがあること、完済時年齢の上限内であることなどが求められます。なお返済負担率に旧居のローンを含めるかどうかは金融機関・商品によって異なり、売却予定と完済見込みを書類で示せれば算定から除外できる取扱いもあります。また、そもそもダブルローンを取り扱っていない金融機関もあるため、事前の確認が必要です。

ダブルローンはどのくらいの期間続くのが一般的ですか?

ダブルローン期間そのものは、新居を決済する時点で旧居の売却活動がどこまで進んでいるかによって変わります。参考として、首都圏の中古マンションはレインズ登録から成約まで平均82.5日(約2.7ヶ月)、そこから決済・引渡しまでにさらに1〜2ヶ月(当社の実務上の目安。買主が住宅ローンを利用する場合は約2ヶ月)を要します。そのため本記事では、旧居の売り出し開始から決済までの目安として4〜5ヶ月を置いています。新居の決済前から売却活動を始めていれば、ダブルローン期間そのものは「旧居の売り出しから決済までの全期間」より短くなり、4〜5ヶ月より短くなる場合もあります。逆に売却が想定以上に長引けば、これを超えることもあります。なお4〜5ヶ月はレインズが公表した平均値ではなく、2つを足し合わせた想定値です。また82.5日は成約した物件だけの平均で、売れ残った物件は含まれていません。資金計画は余裕を持った期間で組んでください。

ダブルローン中の返済を軽くする方法はありますか?

買い先行で住み替える場合、新居のローンについて一定期間、元金の返済を据え置き、利息のみを支払う「返済据置(元金据置)」を利用される方がほとんどです。本記事のモデルケース(新居8,000万円の借入・年利0.945%)では、元金と利息を合わせた毎月の返済が223,784円のところ、利払いのみなら63,000円となり、重複期間中の月間支出は約43.1万円から約27.1万円に下がります。ただし据置期間には期限があり、期限内に旧居が売れなければ元金の返済が始まって支出は元に戻ります。利払いのみを選べる金融機関がありますが、取扱いの有無・期間・条件は商品によって異なるため、借入先にご確認ください。

同じ銀行で住宅ローンを2本組めますか?

金融機関の方針によります。取り扱っている金融機関もあれば、1世帯1本を原則として認めていない金融機関もあります。同じ金融機関であれば既存取引の情報がある分、手続きは比較的スムーズです。いずれの場合も、旧居のローンを借りている金融機関への事前相談は必要になります。

ダブルローン中、住宅ローン控除は2軒とも受けられますか?

いいえ、受けられるのは原則1軒のみです。住宅ローン控除は「主として居住の用に供すると認められる住宅」が対象のため、実際に住んでいる新居の1本だけが対象になります。加えて、居住年およびその前2年・その後3年の計6年間に3,000万円特別控除や買換え特例を適用していると、新居の住宅ローン控除自体が受けられなくなる点にもご注意ください(国税庁「マイホームを持ったとき」令和8年度版)。

旧居を賃貸に出して、その家賃でローンを払うことはできますか?

原則としてできません。住宅ローンは契約者本人が居住する住宅を対象とした融資であり、無断で賃貸に出すと資金使途違反として一括返済を求められる可能性があります。賃貸に出したい事情がある場合は、必ず事前に金融機関へ相談してください。なお【フラット35】の総返済負担率の計算には、賃貸予定または賃貸中の住宅に係る借入金の返済額も含まれると公表されています。

建て替えの場合もダブルローンになりますか?

旧建物の住宅ローンが残っている状態で新築のための借入を行えば、二重返済が発生します。ただし住み替えと異なり、売却による返済原資がないため、旧ローンを自己資金で完済するか、新規借入に一本化するかの検討が必要です。建て替え期間中の仮住まい費用も含めた資金計画を、早い段階で金融機関と相談してください。

ダブルローンが払えなくなったらどうなりますか?

返済を延滞すると、金融機関から督促を受け、状態が続けば期限の利益を喪失して一括返済を求められます。最終的には担保物件の競売に至る可能性があります。競売では市場価格を下回る価格になることが一般的なため、返済が厳しいと感じた段階で、早めに金融機関と仲介会社の双方に相談することが重要です。売却価格の見直しや買取の活用など、競売に至る前に取れる選択肢があります。


まとめ

住み替え時のダブルローンについて、要点を整理します。

  • ダブルローンとは、住宅ローンを2本同時に返済している状態。住み替えでは、旧居の売却で1本目が消えることを前提とした一時的なつなぎとして使われます
  • 審査では既存借入を含む返済負担率が確認されます。ただし旧居の売却予定・完済見込みを書類で示せば、旧居のローンを算定から除外できる商品もあります。売却見込み額を数字で示せることが、審査上の重要な材料になります
  • 都心のモデルケース(新居8,000万円+旧居残債3,000万円)で、据置を使わず元金と利息を返す場合、返済だけで月35.6万円、旧居の保有コストを含めると月43.1万円が毎月出ていきます
  • 買い先行では、新居のローンを一定期間「利払いのみ」に抑える返済据置を使うのが実務では一般的です。モデルケースでは月約27.1万円まで下がります。ただし据置期間には期限があり、その期限が実質的な売却期限になります
  • 売却が1ヶ月延びることで増えるのは約20.8万円(新居のローンは売却時期にかかわらず続くため)。値下げと比べる際は、旧居ローンの利息と保有コストで見た経済的コスト(3ヶ月で約27万円)を基準にしてください
  • 旧居の売り出しから決済までの目安は4〜5ヶ月(成約まで平均82.5日+決済まで1〜2ヶ月)。新居の決済前から売却活動を進めていれば、ダブルローン期間は4〜5ヶ月より短くなる場合があります。82.5日は売れた物件の平均であり、売れ残りは含まれていません
  • 3,000万円特別控除・買換え特例など一定の譲渡所得の課税の特例と、住宅ローン控除は併用できません。居住年とその前2年・その後3年の計6年間に3,000万円特別控除や買換え特例を使うと、新居の住宅ローン控除は受けられません(6年ルール)。住み替えの計画段階で有利判定を
  • 政策金利は2026年6月16日に0.75%程度から1.0%程度へ引き上げられ、7月31日会合でも維持されています。旧居・新居の双方が変動金利であれば、上昇局面の影響を2本とも受けます
  • 1億円で売却した場合、仲介手数料の支払額には最大336.6万円の差があります(税引後の手取り差は譲渡所得や適用する特例によって変わります)。売却期間はコントロールしきれませんが、料金体系は会社選びの段階で比較できます

ダブルローン期間は短いほど資金繰り上の負担を抑えられますが、急いだ値下げが常に有利とは限りません。資金余力と、待つことで生じる経済的コストを踏まえて売却の時期を判断することが重要です。そのうえで期間を左右するのは、売却活動の質です。適正な価格設定と、情報を市場に広く行き渡らせる売り方。この2つが、重複期間の長さを大きく左右します。

住み替えをご検討の際は、まず今のお住まいがいくらで、どのくらいの期間で売れそうかを把握することから始めてください。


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住み替えに伴うダブルローンは、資金計画・売却戦略・税制の3つが絡み合う、判断の難しい領域です。グローバルトラスト不動産は、都心8区に特化した売買仲介の専門会社として、売却見込み額の把握から住み替え全体の進め方まで、一貫してご相談を承ります。

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【この記事の監修者】

桝谷浩太 グローバルトラスト不動産株式会社 代表取締役

桝谷 浩太(ますや こうた) グローバルトラスト不動産株式会社 代表取締役 / 宅地建物取引士

東宝ハウス、三菱UFJ不動産販売、ソニー不動産(現SREホールディングス)にて居住用不動産の売買仲介営業を経験し、仲介部門社長賞・契約件数1位を連続受賞。業界経験18年。2017年にグローバルトラスト不動産株式会社を創業。不動産業界で問題となっている「囲い込み」を仕組みで解決するために、売却仲介手数料最大無料サービスに取り組むなど不動産業界の健全化を促進する活動をする。著書「初めてでも安心!失敗しない家の売り方・買い方」はAmazon不動産カテゴリにてベストセラー1位を獲得。

グローバルトラスト不動産株式会社 〒150-0002 東京都渋谷区渋谷2-3-4 宅地建物取引業免許: 東京都知事免許(2)第100468号 所属: (公社)全国宅地建物取引業保証協会、(公社)東京都宅地建物取引業協会、(公財)東日本不動産流通機構


本記事で使用したデータの出典・集計方法

データ 出典 時点 集計方法
対応8区の中古マンション取引価格 国土交通省「不動産情報ライブラリ」取引価格データ 2024年第4四半期〜2025年第3四半期 グローバルトラスト不動産が集計(中古マンション等・1LDK以上・居住用、n=8,258)
登録から成約に至る日数(82.5日) 公益財団法人 東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2025年)」 2025年(2026年1月20日公表) 公表情報を引用
成約件数・新規登録件数・成約価格・成約㎡単価 公益財団法人 東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2025年)」 2025年(2026年1月20日公表) 公表情報を引用
総返済負担率の基準 住宅金融支援機構【フラット35】ご利用条件 2026年8月確認 公表情報を引用
売却予定住宅のローンを総返済負担率から除ける取扱い/賃貸予定・賃貸中の住宅の借入金の取扱い 住宅金融支援機構【フラット35】「総返済負担率の算定方法の見直しについて」 2020年4月1日以後の借入申込み受付分から適用 公表情報を引用
住宅ローン控除の適用要件・特例との併用不可(6年ルール) 国税庁 パンフレット「暮らしの税情報」(令和8年度版)「マイホームを持ったとき」 令和8年度版(2026年8月確認)/令和8年中に居住の用に供した場合が対象 公表情報を引用
6年ルールの対象となる特例の条文(補足) 国税庁「No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」 令和7年4月1日現在法令等(2026年8月確認) 公表情報を引用。列挙される特例は措法31条の3①・35条①・36条の2・36条の5・37条の5
政策金利(無担保コールレート1.0%程度) 日本銀行「金融市場調節方針の変更について」(2026年6月16日)/「当面の金融政策運営について」(2026年4月28日・7月31日) 4月28日会合0.75%程度 → 6月16日会合で1.0%程度へ引き上げ(適用6月17日)→ 7月31日会合で維持 公表情報を引用
変動金利の水準(試算の前提値0.945%) 各金融機関の公表金利 2026年8月時点 試算用の前提値として使用
仲介手数料の上限 宅地建物取引業法に基づく国土交通省告示(昭和45年建設省告示第1552号/令和6年6月21日国土交通省告示第949号改正) 令和6年7月1日施行 公表情報を引用。「低廉な空家等」の特例(第七)を含む
仲介手数料が譲渡費用にあたること 国税庁「No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」 令和7年4月1日現在法令等(2026年8月確認) 公表情報を引用
毎月返済額のシミュレーション 元利均等返済方式による当社試算 2026年8月 当社推計(記載の借入条件に基づく)
旧居の保有コスト(管理費・修繕積立金・固定資産税) シミュレーション用のモデル条件(統計値ではありません) 2026年8月 当社が仮定した前提値

【最終更新日】 2026年8月7日


【免責事項】 本記事は住み替え時のダブルローンに関する一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の融資可否・税務判断を保証するものではありません。住宅ローンの審査基準・商品性は金融機関によって異なり、また金利は随時変動します。税制の適用要件は個別の事情により判断が分かれる場合があります。実際のご検討にあたっては、金融機関・税理士・税務署等の専門家にご確認ください。記載の数値は本記事作成時点で公表されている情報および当社試算に基づくものです。


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